CTによる診断と治療
CTとはコンピューター断層撮影(Computed Tomography)の略で、X線を用いて身体の横断像(輪切り)を撮影することが出来ます。当センターには16列マルチスライスCTが導入され、0.5mmスライスでの横断面(輪切り)だけではなく、様々な方向の断層像が撮影できます。
断層像の他にも立体的な3D画像を作成することもできることから、困難な手術を行うためのナビゲーションとしてより安全な手術を可能とします。
異常な血管構造ができてしまうことで、腸から肝臓へと運ぶ血液が別のところへ行き、様々な障害を起こしてしまう病気です。
生まれつきの子もいれば、肝硬変などで年をとってから発症する子もいます。
まず門脈とは、胃や腸から吸収した栄養分(食事に含まれる体に有害な物質も含む)を肝臓に直接運ぶ血管です。
通常は腸で吸収した成分が門脈を介して肝臓に行き、その次に心臓を介して全身へと運ばれます。
門脈体循環シャントとは、この血管に不必要なバイパス(シャント血管)ができてしまいます(下図)。
そのため肝臓には血液が十分供給されなくなってしまい、それが原因で様々な症状を引き起こしてしまいます。
トイ・プードルやミニチュアシュナウザーなど、トイ種・ミニチュア種に多いです。
ただし、他の犬種や猫でも発症することはあります。
無症状から、命に関わるものまで様々です。
一般的には消化器症状(嘔吐や下痢)、発作、よだれ、異常行動、腹水など。
生まれつきこの病気があると、発育不良がおきることもあります。
まずは血液検査、X線検査、腹部超音波検査を行います。
尿石症を併発することが多いので、尿検査も重要です。
血液検査 | 肝機能の異常(特に総胆汁酸やアンモニアの高値)が認められます。 |
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X線検査、腹部超音波検査 | 肝臓が小さいことが多いです。 |
以上の検査では、門脈体循環シャント疑い、までの診断になります。確定診断をするためには、CT検査が必要です。
図は、当院のCT検査によって発見された、門脈奇静脈シャントの例です。
本来は門脈がまっすぐ上に伸びるはずですが、無いはずのシャント血管(緑色)が奇静脈へと分岐することで、肝臓へ行く門脈が細くなってしまっています。
外科手術により、シャント血管をなくしてしまうことが唯一の根治的治療法です。
ただし、手術に耐えられない動物やシャント血管が何本もある動物などは、根治ができず内科治療でコントロールを目指す場合もあります。
基本的には開腹手術によって、シャント血管を糸で縛って血液を通らなくします。
このとき、太い血管を急に縛ってしまうと重大なうっ血が起きてしまうことがあるので、門脈の血圧や内蔵の変化などを十分にモニターしながら手術を行います。
もし一回の手術でうっ血が重度になりそうなら、二回に分けて手術を行うこともあります。
手術後の合併症は血栓やエンドトキシンショック、発作、死亡が報告されており、その発生率は2~9%といわれています。
動物ごとに手術リスクも異なるため、当院ではリスクについての説明も必ずさせて頂きます。
低タンパク食、ラクツロース(腸内アンモニアの減少などを目的として)、抗菌薬が主な治療です。 症状によっては点滴や発作の治療などを行います。