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2022.04.20

胆嚢粘液嚢腫・胆石症

胆嚢とは、肝臓で作った消化酵素液(胆汁)を一時的にためておくための袋状の臓器です。右上腹部にひとつだけあり、胆管と呼ばれる管が十二指腸につながって胆汁を排出しています。
 役割が少ない割に、何かとトラブルの多い臓器のひとつであり、病気によっては時に急変があり得る怖い臓器です。胆汁にはビリルビンという体にたまってしまっては毒になる色素が含まれているので、万が一胆嚢にトラブルが生じるとビリルビンが体に蓄積する「黄疸」という病態に陥ります。黄疸が続くと胆嚢以外のあらゆる臓器にも悪影響が出て命に関わります。
 「胆嚢粘液嚢腫」とは、本来はサラサラな液体であるべき胆汁が、粘液状に固まってしまう病気です。小型犬から大型犬までどの犬種でも発生しますが、特にミニチュア・シュナウザー、シェルティ、コッカー・スパニエルなどの犬種に多く診られます。甲状腺機能低下症とも関連があると言われています。
 「胆石症」とは人と同様、胆嚢内にまるで石のような固まりができてしまう病気です。人ではコレステロール結晶が多数を占めますが、犬ではなぜかカルシウム結晶が多いと言われています。人では痛みで病院を受診し、胆嚢の病気が判明することが多いですが、犬はなかなか痛みをあらわさず、無症状であることも多いため発見が遅れがちです。
 いずれの病気であっても、粘液や石で胆管がつまって胆汁の流れがわるくなると黄疸が生じますし、胆嚢の壁が炎症を起こして破けてしまうこと(胆嚢破裂)で腹膜炎を起こす可能性もあります。しかしながら、いざ胆管がつまってしまうまでは無症状なことも多いためやっかいです。
 万が一症状がすでに出てしまった場合は、助ける為に点滴や抗生剤に加えて、胆嚢の外科的な摘出が必要です。あまりにも容態が悪い場合は胆嚢に針をさしたりドレーンを設置して胆汁を抜きとり急をしのぐ場合もあります。
 たとえ無症状であってもエコー検査で重度の所見が得られた場合は、将来破裂してしまう前に予防的に胆嚢を摘出することも勧められます。
 胆嚢疾患は無症状であれば、わんちゃんの見た目やしぐさ、触診で気付いてあげる事が困難です。血液検査で肝臓の数値(ALT、ALPやGGT)が高いと指摘を受けた場合は、エコー検査やレントゲン検査で肝臓と胆嚢の状況を確認することが本当にお勧めです。